アーカイブ

何をどう選ぶかが問題

私はいまでも、服を買おうとして店の人に差し出すその一瞬、二十三歳の時に出会ったあの女性のことを思い出す。数は差して少ないけれど、持っている服がすべてセンスのいいものばかり。蒔絵の櫛を艶然(えんぜん)と微笑(ほほえ)む彼女の姿がよみかえってくる。そして無意識にこれを買っていいのかしら、間違っていない?と自らにもう一度問いかけている。理想のワードローブ。それはひとつひとつの服や小物がすべて自分らしいもので揃えられ、無駄なくフル回転しているということだ。おしゃれというとついコーディネイトと考えがちだが、その前にまず、何をどう選ぶかが問題なのである。買ったものがその人に合わない、間違ったものだったら、どんなに腕のいいスタイリストが組み合わせたとしても決して素敵に見せることはできない。スタイルを作る作業は、買う時にすでに始まっている。