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ぴったりとフィットする細身のTシャツ

一九七三年、私は十七歳だった。一年前に入学した都立高校はすでに小さな学園紛争の嵐が過ぎ去ったあとで、規則といえるようなものは、ほとんど機能していなかった。制服は廃止されたばかりで、入学した当時はあまりに自由な生徒たちの服装にあっけにとられた。しかし二年めの冬ともなると私もすっかりその環境になじみ、クラスメートたちとおしゃれを楽しむ余裕がでてきた。アップルグリーン、メタリックイエロー、夜空のブルー。黒に純白、淡い水色……、何人かでパッと手を出し伸ばした指先をひとつに集めると、そこにマニキュアの花が咲いた。赤やピンクではなく、わざとマニキュアらしくない変わった色を塗るのがおしゃれだった。ちょっと宇宙っぽく、ちょっとアヴァンギャルドな色。まだ長く伸ばして手入れをすることも知らない、子供っぽい小さな丸い爪がせいいっぱい背伸びをしていた。マニキュアだけではなく、メイクの色もアヴァンギャルドが素敵だった。

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何といっても憧れの化粧品は“クレヨン”というものである。平らな缶のケースに一列に並んだ、クレパスのように紙の巻かれたメイクカラー。色は六色入りと十二色入りがあり、アイシャドウや口紅に自由に使う。黄色や鮮やかなグリーンを瞼に、ブルーを淡く唇にのばしてもいい。そんなメイクをするなら、ぜったいに欲しいのは、ニコルのTシャツかケンゾーのセーターだ。襟ぐりが丸く大きく開いて、袖は細く長く、胸からウエストにかけてぴったりとフィットする細身のTシャツは、この世で一番格好いいものに見えた。ましてパリのケンゾーの横縞が不規則に編みこまれたおなかの見えそうな短い丈のセーターに、ヒップホーンのパンツをはけば、このコドモじみた自分から脱皮できるのにと信じていた。